2-5.補償金制度のあり方について(仮に補償の必要性があるとした場合)(第5節関係)
(3下表1参照。
(4)これ自体は妥当だが、 DRMはセキュリティと同じで 本質的にいたちごっこだ。プロ テクトが突破される度に補償金額を考え直す必要がある。
例えば現行の地デジのプロテクトは、既にデジタルのまま突破できるようだ。
単純に違法合法の解釈を揃えるだけでもそれなりの時間がかかる。こういう仕掛けで変化の速度についてゆ く事ができるかどうか。
補償金徴収額 | 支払い | デジタル録音 | デジタル録画 | 備考 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
義務者 | 協力義務 | 機器 | 媒体 | 機器 | 媒体 | |||
独 | 205億8,000万円 | 製造業者 輸入業者 |
販売業者に 連帯責任 |
◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 共通目的事業: 法律上の義務はないが、実務上、管理団体が構成員の同意を得て社会・文化的な目的の事業に支出。 その他: PCも対象、金額協議中 |
仏 | 217億0,000万円 | 製造業者 輸入業者 |
- | - | ◯ | - | ◯ | 共通目的事業: 法律により、補償金の25%は、創作援助活動、生の興行の普及及び芸術家養成活動に使用しなければならない。 (←25%で54億2500万円) |
英 | 補償金制度無し | 録音録画が合法(著作権侵害の責任を問われない)なのは、有線を含む放送番組を私
的及び家庭内でのタイムシフト視聴のために録音録画する場合だけ(第70条)。 原則として著作権侵害にならないのは、研究又は私的学習を目的とする文芸、演劇、音楽、美術の著作物の公正利用(fair dealing)のみ(第29条)。娯楽目的の私的録音録画はこの範囲に入らない(BBCのユルさはこのへ んが背景か。あと条文上はCD to MDもアウトになるよなぁ)。 包括的な補償金制度は問題が多いと考え。権利者の利益は著作権保護技術と契約に任せる方向(つまり作り手の 自己責任?)。 |
||||||
蘭 | 37億5,340万円 | 製造業者 輸入業者 |
- | - | ◯ | - | ◯ | |
墺 | 24億6,820万円 | 製造業者 輸入業者 |
卸売・小売業者に 保証人責任 |
- | ◯ | - | ◯ | |
西 | 82億1,800万円 | 製造業者 輸入業者 |
流通・卸・小売業者に 連帯責任 |
◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |
米 | 1億6,900万円 | 製造業者 輸入業者 |
- | ◯ | ◯ | - | - | 共通目的事業:無し 全て権利者に分配。 |
加 | 35億4,300万円 | 製造業者 輸入業者 |
- | - | ◯ | - | - | |
日 (H16年度) |
37億7,900万円 | 利用者 | 製造業者は 支払協力義務者 |
◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
こういう表つくりだすとハマるw。DRMがある場合は金額算定に反映させるべきだけど実際の判断は苦労してるぞとか、新種の機器やサービスどうす んだってんでどこも揉めてるぞとか、各国の補償金額の違いとかも面白いんだけど割愛。
このへんぜんぶ華麗にスルーするイギリス巧い。条文上はCD to iPodすらアウトになるはずだが、ミュージシャンになるための私的学習なんです!と言いタレるとか?、権利者も黙認してるとか?なんか老獪だわ(ここで 著作権侵害が「非親告罪」だとまた面倒になる)。一般的には現実に合わせてちまちま法律を変えて行くのは良い事だが、抽象的な権利をカネに換える商売でソ レやると、すぐに建て増し温泉旅館になってみんなが迷う。原則はシンプルであるべきだ。
全体としては、製造業の弱い国が高めに掛けて、自国の文化振興(いわゆる補償金の共通目的事業)につぎ込む。といった構図がある。ような印象を受 けた。
EUで補償金に反対しそうなのはPhillips, Nokiaくらいしか思いつかない。実はこれらの大企業が域内GDPに占める割合は韓国のサムスンや日本の製造業ほど高くない。韓日米から補償金を獲って 自国の文化振興に使うというのは、これわこれで老獪だ。一般的に音楽や映画の輸出は安定はしないが製作コストの回収は域内で済んでいる。だからモノより利 益率が高いし、観光客の客寄せに回せば一石二鳥でもある。オペラ座とかベルリンフィルとかそうゆうの。これら純粋な3次産業、といって悪ければ4次産業 (情緒産業)はモノより国際的なリスペクトを得易い。それから観光は国全体として見れば超おいしい。喰う寝る遊ぶで全部ムシれるから。輸送費あっち持ちで お財布が飛んで来るようなもんだ。
米国の場合、ハリウッドは映画館、DVD、有料TVなど流通/集金回路の複線化(マルチウィンドウ)ががっちり機能してるのと、フェアユースの理 念、だ けがあって後は裁判でどうぞ!というシンプルな著作権法(英米型著作権ってコレ?)、そしてMS・Apple・Googleなどの外貨稼ぎまくってるシリ コンロビーも見逃せないだろう。これら2次産業とも3次産業とも付かない2・3ミックス型企業は日本ではほとんど政治力を持っていない。「ユーザーエクス ペリエンス」=「おもてなしのココロ」を重視する点で、実は情報産業のフリをした情緒産業と考えても良いだろう。これがハリウッドロビーの政治力となんら かの勢力均衡状態にあると思われる。
製造業が非常に強い日本では補償金への抵抗は強いと思う。
だが日本はGDPに占める製造業の比率が高すぎる。
国内に6つも8つも家電メーカーがあるのは非効率だ。高度成長期には国内競争の激しさが高品質に繋がったが、その構造がそのまま弱点になっている。各
経済域の小大名(米国のGEやRCA、EUのPhillipsやBraunなど)を個別に攻略していれば済んだ時代とは異なり、現在の相手は
単独で世界市場をまるっと相手にするサムスンなどの大大名だ。規模が違う。パラダイス鎖国の中で食い合いを続ける弱小企業の群れはケータイで世界市場から
叩きだされ、
テレビですら世界市場シェアトップはサムスンに奪われている。
低所得層を中国に奪われ、中流を韓国にもってかれ、高級品市場に逃げたって、そ こはポルシェとフェラーリしか生き残れない市場だ。ついでに言えばサムスンのハイエンドTVはソニーのハイエンドより高く売れる。国内だけが違う。「日本 の技術は優れている」は解答にならない。百発百中の砲一門は百門の百発一中に勝てないからだ。「垂直統合がわるい」「韓国が盗んだ」「(どこだ かのHD-DVD移行は)M$の陰謀」に至ってはコドモのイイワケだ。業界再編が必要な筈だが遅々として進まない。危機感が無いのだ。
もちろん消費者的にも補償金への抵抗は根強い。自分のお財布から直に権利者に投げつけるのでない限り、どうしたって合理性と実効性に疑問が付いて 回る。しかし表2の状態で補償金抜きや、英米並みのコピー自由化を進めるのはいささかマズいように思う。
■表2:コンテンツ産業のGDPに対する割合米国 | 世界平均 | 日本 |
---|---|---|
4.70% | 3.15% | 2.66% |
ソフトパワーをカネに換えられなければイマドキ「先進国」は名乗れない。家電屋さんの行く末がどうあれ、産業構造の高次元化、3次4次産業の強化 が必要だと思う。日本の強みはものつくりでも技術力でもなく、寝食を忘れて必要以上に細かい工夫をしまくる職人 「ハダ」だ。向かうべき先はソフトウェアかもしれないし、観光かもしれないし、もしかしたら留学生が押し寄せるような教育産業かもしれないが、サクヒン商 売かも知れない。どういうカタチであれ(それこそ天下りが補償金を中抜きしようがなんだろうが)コンテンツ産業に資金を回していく事には国益があると思 う。
せめてこれを3.0%あたりに持ってくために補償金を使う、というなら自分は補償金に反対しない。独仏のコンテンツ振興に数百億収めておいて、国 内向けは出せませんというJEITAの主張は素直には首肯しがたい。
■補償金を獲るならば
ちゃんと配分できんのかよ?ってな疑いが拭えないとか、データ用のCD-Rどうすんだ?などなど、補償金制度はどうやったって揉める。製造業だけ
に負荷を掛けるのはフェアではないし、獲るならできるだけ広く浅く可能な限り均等に、がマシだと思う。
現行の補償金制度は録音録画機器・記録媒体に課金しているが、補償金制度を根本的に見
直してでも録音源・録画源の提供者にも掛けるべきだと思う。CD、DVD販売、これらのレンタル、そして放送事業。
理想的にはイギリス流の権利者の利益は著作権保護技術と契約に任せる方向、つまり作り手の自己責任だが(JEITAが主張するところでもある)、 私録小委の検討では、"民間同士の契約関係に全 面的に委ねるこの方法は、このような契約が実現できるか疑わしいことなどから、課題が多いとされた。"としている。これは納得が行 く。日本の場合、作 り手より流通経路のほうが圧倒的に強いという構造があるからだ。やや古いが経産省は「アニメ産業の現状と課題」というPDFの中で独 禁法の厳格な運用をチラつかせ、キー局以外の流通出口を模索すべしとしている。これはアニメに限らず、映像下請けプロダクション全般にも通用する 話だと思う。日本で最も強い流通回路はテレビだ。これはスポンサー企業群→広告代理店→キー局というオカネの流れで支えられている。もしもスポンサー企業 の主軸が製造業であれば、このビジネスモデルにとって「コンテンツ産業の儲け」は他人事、すくなくとも余録だ。
このコンテンツ流通回路からクリエイタ(層)への所得移転、という名目が、私的録音録画補償金には立ち得る。
どのみち権利者に正確に配分できないのであれば、共通目的事業への配分を厚くして、創作援助や流通回路のインキュベイトに突っ込む。その為の「事
実上の目的税」的な性格を持たせられないだろうか。例えばインディーズバンドの発表の場、それ用の音楽共有サイトの鯖代にちょっとカンパ出してみるとか。
同じ事を映像でやるなら、、、ニコ動は現状では有り得ないしニワンゴもんなもん要らねぇだろうが、いずれにせよフランス並みの50億あればアイデアはいろ
いろあると思う。その為にみなさんちょびっと喜捨をタノム。みてぇな。いくらが良いのかまではわからないけど。
くどいが補償金は個々の権利者に正確に届くとは限らない。権利者サイドにとっても補償金は結構苦渋の選択なのだと思う。でも、独仏の権利者(層) に400億回ってて、日本の権利者(層)が40億ってのは、やっぱちょっと見劣りする。日本のテレビの面白さは群を抜いてると言う。アニメは世界で見られ てると言う。でも現場のクリエイタは貧乏。ヘンだろうこれは?
どのみち補償金の分配回路には天下りだのどこにでも食い込んで来る広告代理店だのが雲霞のように取り付くだろうが、それらに効く鼠返しは、いまん とこ無い。この点はニコ動やYouTube最強だと思う。ただし、現在のニコ 動やYouTubeは商品として作られたものを作り手にびた一文払わずに消費者にタダで運んでいる。いずれ彼らも問題点を封じ込めてコンテンツ流通回路に 育つだろうが。未来の可能性は認めるものの、現状では既存の流通回路より 遥かにバランスが悪く、個人的にはやや心理的障害を感じる。
って別に著作利権のミカタをする筋合いはあんまないんだけども。
誰かが特別に「強欲」という事はないと思う。消費者も権利者も間に入る運び屋もオイラもアンタもみんなみんな強欲だ。清貧など誰も望まない。正直になれ
よぉ?なっちゃえよぉ?。望み得る最善は勢力均衡。
この点「強欲な権利者」vs「我が儘勝手な消費者」という構図はちょっと不毛だ。
日本で一番カネと力を持ってるのは製造業や放送局など「サクヒンの運び屋」だからだ。彼らは消費者のミカタをして「パラダイス鎖国」や「流通回路の独
占」を維持拡大しようとする。良い悪いではなくそう動くのが最も利得がでかい(実はAppleもYouTubeもニコ動も最終的には同じ位置~ワン・アン
ド・オンリーなサクヒンの運び屋~を目指してると思う)。
「作り手と受け手の妥協」vs「運び屋」のほうがまだマシ。
均衡するかどうかはともかく、戦力差が縮まる。だって日本の「作り手」ってほんっとに貧しいぜ?映像関係で一番オカネが良いのがCM関係って、すっげぇ
不毛ぢゃん?そもそも論で言やぁ作り手と受け手さえいればサクヒン商売は成立するのだ。「運び屋」はせいぜい必要悪だ。
もしも放送局も補償金の支払い義務者に加えるなら、それは放送局や広告代理店を迂回したカネがクリエイタ「層」に届くと言う事だ。機器やメディア の対象範囲を拡げるなら、メディアやHDレコーダを買えば買うほど、そのうちの幾ばくかがクリエイタ「層」に回ると言う事だ。もしもDVDをニコ動にうっ ぷするのが正義というなら、補償金の拡大~それこそ汎用機器までもフルカバーするもの~はちょいとマシな正義だと思う。チャーシュー増し増し、くらい。
その分、ダビ10のさらなる緩和にミカタしてくれませんかとゆう、結局そこなんだけども。エンコ厨ですから。