ゲーム脳(げーむのう)は、日本大学文理学部体育学科教授の森昭雄が、2002年7月に出版した著書『ゲーム脳の恐 怖』において提示した造語である。森は ゲーム中の脳波を測定する実験によって「テレビゲームが人間の脳に与える悪影響」を見出したと主張しており、この状態を象徴的に表現したものである。しかしこれはネット上だけの事であり『ゲーム脳』という差 別語自体は社会に定着している。
この主張がマスコミの報道や講演を通して広く認知されたことにより、「ゲーム=犯罪の温床となる」または「学力を低下させる最大の原因」という認識を持つ 層が現れた。「ゲーム=絶対悪」であることを望む保護者や教育関係者らに支持され、ゲームの規制を有利にするための論拠としてしばしば引き合いにされる が、主張の科学的正当性や根拠、客観性については批判的な見解が多く、同書は2003年度の「日本トンデモ本大賞」にノミネートされている。
ゲーム脳に関する研究については2002年10月、同書の出版に先立って、森は自ら日本健康行動科学会を設立、同会理事長を務め、第1回学術大会において 口頭発表を行った。しかし、学術論文誌に論文は掲載されていない。なお、同会は名称に「学会」を含んでいるが、日本学術会議には登録されていない(日本に おいて「学会」を名乗る事の規制や条件はなく、自由である)。また、森はマスコミなどには「脳神経学者」の肩書きで登場する事が多いが、実際は文学部出身 であり、医学には転向したものの博士論文は脳でも神経でもなく筋肉に関する論文であり、現在も専門は運動生理学である。
また、日本神経科学学会 (4200人の会員で構成されており、日本学術会議に登録されている学会) の会長であり、大阪大学名誉教授である津本忠治は、『ゲーム脳の恐怖』やよく似た理論である『脳内汚染』(岡田尊司著) のような、トンデモ本とされている脳神経を扱った本に対し、「こういった本は神経学に対する信頼を損なうことになる。今までは放置の姿勢だったが、これか らは間違いを正すべく努力したい」と学会の会報「神経科学ニュース」や雑誌のインタビューで表明している。