Apple-H.264最大の強みは設定の簡単さだ。画質に不満を感じる事はまず無い。ビットレートを過剰に下
げ過ぎない限り、狙っても画質破綻は起こせない。
とにもかくにも問題は速度だ。
QuickTime 7のH.264:その内容 (Apple社) ※
太字オレ
QuickTime 7 for
Tigerに組み込まれているH.264には、低いデータレートで自然な映像を再生する一連の高度なテクノロジーと特許出願
中の技術が実装されています。H.264エンコーダの特長は、次のとおりです。
- 希望のビットレート、最適数の圧縮パスで可能な限り最高の結果が得
られるインテリジェントなマルチパスエンコーディング
おそらくこれがAppleの独自技術だと思われる。
"インテリジェントなマルチパスエンコーディング"
というのは、x264cliにもMEncoderにもffmpegにも無く、3ivx4.5も自動2パスを使うには専用フロントエンドのDivaが必要
だ。
これはNAB2005でNTTサイバースペース研究所が発表した
多段パスで1080pを1.8Mビット/秒まで圧縮する手法を使い易く工夫
したものだろう。見事。
QuickTime Player
ProのApple-H.264を使っていると、最初にものすごい爆速パスを一回走らせているように見える事から、ここで粗々な全体のレート統計を取り、
ピーク間隔やグラフのなだらかさを分析して適切なパス数を決定していると思われる。MEncoderのturboより遥かに高度だし、これなら
素
材の映像内容に合わせて設定を組み替える必要なんて一切無い、のみならず
パテントの地雷原を
迂回できる。代償としてパス数がバリアブル必須になるので高速化は完全にCPU頼みになる(4,8,16コアが一般化するまで速度向上に期待し難い)。い
やいやいやまてまてまて、最終パス数の決断はなにも1st終了後である必要はないぞ?2nd, 3rdの結果を見て
「ん~も
う一パス!」とかやってる可能性だってある。いやいやいやまてまてまて、見てるのはレートか?
SSIM
とかの画質指標ぢゃねーのか?「誰でもワンボタンでそこそこ画質」を目指すならそうあるべきだ。
QT
がどうやってパス数を決めているのかは知る由もない(プロプライエタリだし)、
問題は決断の根拠がなんのグラフなのかという事だ。
レートか、QPか、平均化区間単位か、GOP単位か。それさえわかればあとは数学か統計学の応用問題。分散とか加重平均とか標準偏差とかなんかそういう
の。それをベースに適切なパス数を決める手も、なんかあるだろう。Appleのパテントを迂回する手を含めて。例えば、仮にAppleがレートグラフベー
スデシジョンならQPグラフベースデシジョンで行くとか。
いやど文系の勝手な推測にすぎませんが。
それ以外の部分はx264の方が高度に見える。最終的な速度は現状、圧倒的にこちらが速い(画質の同条件比較はQTで動くx264がなければ不可能だ)。
元々のx86最適化に加えてスレッド数も最大16まで拡張され、
短期的に
も
中期的にもApple-H.264は追いつけないだろう。
問題はじゃじゃ馬ぶりだ。使いこなすにはコツが要る。設定次第で画質は「キサマはXvidにも及ばんのくわっ!」と「無敵無敵さいきょー!」の間まで幅広
い。純粋性能では圧倒的なのだが(参考:
モスクワ州立大学年次コデック比較)。
x264
が "インテリジェントなマルチパスエンコーディング"
を実装したら、ちょっとスゲェ事になる。誰でも簡単にそこそこ画質「も」達成できるコデックになるからだ。
上
記引用元の続き。Apple-H.264がx264に勝り得るのは
"インテリジェントなマルチパスエンコーディング"だけだ。ほんっとに、よく見切った!感動したっ!!
- ドラフトエンコードの作成、差し迫った締め切りへの対応、
QuickTime Broadcasterでのライブエンコーディングに適した時間節約型シングルパスエンコーディング
- Apple
-H.264:選択可能
- x264:固定量子化1パスqp、疑似固定量子化1パスcrf。後者はbitrate
指定もまぁまぁ効く。ライブストリーミングはx264の目的外(需要が無い)。
- スト
リーミングやCD/DVDの再生のような、データレートに制限がある用途のためのピーク制限付きVBRオプション
- x264:ABRの平均化区間(アベレー
ジング・ピリオド)にレート制限をかけると思われる。VBV関連オプションに相当か。
- よ
り効率的に映画データを表現するための高度なフレーム並べ換え(Bフレーム)をサポート
- Apple
-H.264:選択可能、枚数指定不可、適応的挿入不可。つまり、事実上MPEG-4 ASP相当。
- x264:
b_adapt, bframes=<0-16>, (no)weight_b, (no)b_pyramid, bime, brdo。この連携がx264の花!
- 従
来のブロッキングやリンギングといったアーティファクトの影響を、特に細部領域で削減する 4 x 4整数変換
- Apple
-H.264:選択不可。強制適用。
- x264:partitionsのi4x4,
p4x4。低解像度で効果大。640x480では必ずしも多く無い。これよりi8x8, 8x8dct(High
Profile)の方が画質貢献度が高い。
- ハイモーションビデオで細部およびグラデー
ションをより効率的に圧縮する改善されたフレーム間予測
- Apple-H.264:
H.264/AVC規格の紹介文に等しい。強いて”ハイモーションビデオで”に着眼すれば、量子化スケーリングの対数化が相当か。
- x264:
qp, qp_min, qp_max, qp_step
- 動いているオブジェクトを明
瞭に再構成する改善された動き予測精度
- Apple-H.264:選択不可=適用アルゴリ
ズム固定。
- x264:me,
subq。何れも目的に応じて適用アルゴリズムを選択できる。速度と画質の取引。
- 細部
領域での複雑な動きをより効率的にエンコーディングする柔軟なブロックサイズでの動き予測
- Apple
-H.264:選択不可。適用ブロックサイズ固定。
- x264:partitions
- ブロッキングアーティファクトを除去する適応型インループデブロックキングフィルタによる、スムーズで
クリーンな画像
- Apple-H.264:選択
不可。適用値固定。
- x264:(no)deblock,
deblock=<alfa,beta>
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